目次
GA4 クロスドメイン設定とは?基本概念と必要性
GA4のクロスドメイン設定とは、異なるドメイン間でユーザーの行動を1つのセッションとして計測するための設定です。
例えば、メインサイトが「example.com」で、決済ページが「shop.example.net」のように別ドメインになっている場合、設定を行わないと同じユーザーの訪問でも別々のセッションとして記録されてしまいます。
クロスドメインとは何か
クロスドメインとは、複数の異なるドメイン名を持つウェブサイト間でのユーザー移動を指します。通常、ユーザーが異なるドメインに移動すると、ブラウザは新しい訪問として扱い、以前のサイトでの行動履歴との連続性が失われます。
具体的には、次のようなケースがクロスドメインに該当します。
ケース | 具体例 | 設定の必要性 |
---|---|---|
本サイトと決済システムが別ドメイン | example.com → payment.example.net | 必要 |
コーポレートサイトとECサイトが別ドメイン | company.co.jp → shop.company.com | 必要 |
本サイトと予約システムが別ドメイン | hotel.com → reservation.hotel.jp | 必要 |
同一ドメイン内の異なるページ | example.com/page1 → example.com/page2 | 不要 |
GA4でクロスドメイン設定が必要な理由
クロスドメイン設定を行わない場合、データの正確性が大きく損なわれ、マーケティング施策の効果測定が困難になります。主な問題点として次のようなものがあります。
まず、セッションの分断が発生します。ユーザーが「example.com」から「shop.example.net」に移動した際、本来は1回の訪問であるにもかかわらず、2回の別々のセッションとして計測されます。これにより、セッション数が実際よりも多くカウントされ、データの信頼性が低下します。
次に、参照元の情報が正しく記録されません。ドメイン間を移動すると、移動先のドメインでは前のドメインが参照元として記録されてしまいます。例えば、Google検索から「example.com」に訪問し、その後「shop.example.net」に移動した場合、本来の参照元は「Google」であるべきですが、「example.com」が参照元として記録されます。この結果、広告やSEOの効果測定が正確に行えず、ROI分析が困難になります。
さらに、コンバージョンの計測にも影響します。決済ページが別ドメインの場合、購入完了などの重要なコンバージョンが別セッションとして扱われるため、どの流入経路から購入に至ったのかを正確に追跡できません。
設定しない場合のデータへの影響
クロスドメイン設定を行わない場合、GA4のレポートには次のような歪みが生じます。
ユーザー数が実際よりも多く計測されます。同一ユーザーが複数のドメインを訪問すると、それぞれのドメインで新規ユーザーとしてカウントされるためです。これにより、実際のユニークユーザー数を把握できず、リーチの評価が不正確になります。
直帰率も誤った値として表示されます。ユーザーが最初のドメインから別ドメインに移動した時点で、最初のドメインでは1ページのみの閲覧で離脱したと判断され、直帰としてカウントされます。本来は複数ページを閲覧しているにもかかわらず、直帰率が高く表示されてしまいます。
また、ユーザーの行動フローも途切れてしまいます。GA4の探索レポートや経路データ探索では、ドメイン間を移動する際に経路が分断され、ユーザーがどのような導線でコンバージョンに至ったのかを把握できません。
設定が必要なサイト構成の例
クロスドメイン設定が特に重要となるサイト構成には、次のようなパターンがあります。
ECサイトで決済システムに外部サービスを利用している場合です。多くのオンラインショップでは、セキュリティの観点から決済処理を専門の決済代行会社に委託しており、決済ページのドメインが本サイトと異なります。この場合、購入完了までのユーザー行動を正確に追跡するために、クロスドメイン設定が必須です。
コーポレートサイトとサービスサイトを別ドメインで運営している企業も設定が必要です。例えば、企業情報は「company.co.jp」で公開し、実際のサービス提供は「service.company.com」で行うようなケースでは、ユーザーがサイト間を移動した際の行動を一連の流れとして計測する必要があります。
予約システムや申込フォームを外部サービスで提供している場合も該当します。ホテルの予約システムや、セミナーの申込フォームなどを別ドメインのサービスで運用している場合、メインサイトからの流入と予約完了までの経路を正確に把握するために設定が求められます。
さらに、国際展開しているサイトで国別にドメインを分けている場合も重要です。日本向けサイトが「example.jp」、グローバルサイトが「example.com」のように分かれている際、ユーザーがサイト間を移動する行動を統合して分析するためには、クロスドメイン設定が必要です。
GA4 クロスドメイン設定の事前準備
GA4でクロスドメイン設定を行う前に、適切な準備を整えておくことで、スムーズに設定を進められます。
設定作業に入る前に確認すべき項目や準備すべき情報を把握しておくことで、設定ミスや後からの修正作業を防げます。
対象ドメインの洗い出しと整理
まず最初に、クロスドメイン設定の対象となるすべてのドメインをリストアップしましょう。メインサイトのドメインだけでなく、ECサイトのカート部分や決済ページ、予約システム、外部のランディングページなど、ユーザーが遷移する可能性のあるすべてのドメインを確認します。
対象ドメインを洗い出す際には、以下の表のように整理すると管理しやすくなります。
ドメイン種別 | ドメイン名 | 用途 | トラッキングの必要性 |
---|---|---|---|
メインサイト | example.com | コーポレートサイト | 必須 |
ECサイト | shop.example.net | 商品購入ページ | 必須 |
決済システム | payment.example-checkout.com | 決済処理 | 必須 |
ランディングページ | campaign.example.jp | キャンペーン専用ページ | 必須 |
この段階で漏れがあると、後から追加設定が必要になり、その間のデータが正しく取得できない可能性があります。関係部署やシステム担当者と連携して、すべてのドメインを確実に把握しておきましょう。
GA4プロパティとデータストリームの確認
クロスドメイン設定を行うには、GA4プロパティとデータストリームが既に作成されている必要があります。
Google Analyticsの管理画面にアクセスし、対象となるプロパティが存在するか、またウェブデータストリームが正しく設定されているかを確認しましょう。
データストリームの確認では、以下の項目をチェックします。
- 測定IDが発行されているか(G-から始まる測定ID)
- 拡張計測機能が有効になっているか
- 基本的なタグが既にサイトに実装されているか
- データが正常に収集されているか
既にデータストリームが設定されている場合でも、各ドメインで同じ測定IDを使用することがクロスドメイン設定の前提条件となります。
異なる測定IDを使用している場合は、事前に統一する必要があります。
Googleタグマネージャーの導入状況確認
GA4のクロスドメイン設定は、直接タグを編集する方法とGoogleタグマネージャー(GTM)を使用する方法があります。
GTMを使用すると設定や変更が容易になるため、まだ導入していない場合は、この機会に導入を検討するとよいでしょう。
GTMが既に導入されている場合は、以下を確認します。
- すべての対象ドメインでGTMコンテナが実装されているか
- 同一のコンテナIDを使用しているか、または複数コンテナの場合は連携設定が適切か
- GA4設定タグが既にGTM内で設定されているか
- 公開バージョンが最新になっているか
GTMを使用しない場合は、各ドメインのHTMLソースに直接GA4タグが埋め込まれているかを確認し、編集権限を持っているかも事前に確認しておきましょう。
管理者権限とアクセス権限の確認
クロスドメイン設定を実施するには、GA4プロパティに対する編集者以上の権限が必要です。自分のアカウントに適切な権限が付与されているか、Google Analyticsの管理画面で確認しましょう。
権限が不足している場合は、プロパティの管理者に連絡して権限の付与を依頼します。また、複数の担当者で作業を進める場合は、関係者全員の権限状況も事前に整理しておくとスムーズです。
サイト構造とユーザー動線の把握
クロスドメイン設定を正しく機能させるには、ユーザーがどのようにドメイン間を移動するかを理解しておくことが重要です。例えば、メインサイトからECサイトへのリンク、決済システムへの遷移、外部ランディングページからの流入など、主要な動線を図示しておくと設定時の参考になります。
特に注意すべきポイントは以下の通りです。
- どのページからどのドメインへリンクが張られているか
- フォーム送信後に別ドメインへリダイレクトされるか
- 決済完了後のサンクスページがどのドメインにあるか
- 外部サービスを利用している箇所はどこか
これらの情報を整理することで、クロスドメイン設定が必要な箇所を漏れなく特定でき、設定後の検証作業もスムーズに進められます。
既存の参照元除外設定の確認
GA4では、デフォルトで一部のドメインが参照元から除外されています。クロスドメイン設定を行う前に、既に除外設定されているドメインがないか確認しておきましょう。
GA4の管理画面から「データストリーム」を選択し、該当するウェブストリームの詳細設定内にある「タグ設定を行う」から「参照元除外リスト」を確認します。既に除外されているドメインがある場合は、クロスドメイン設定との整合性を確認する必要があります。
テスト環境の準備
本番環境でいきなり設定変更を行うと、万が一設定ミスがあった場合にデータ収集に影響が出る可能性があります。可能であれば、テスト環境やステージング環境で事前に設定を試し、動作確認を行ってから本番環境に適用することをおすすめします。
テスト環境が用意できない場合でも、GTMのプレビューモードを活用することで、公開前に設定内容を確認できます。また、設定変更前に現在の設定内容をスクリーンショットやメモとして記録しておくと、問題が発生した際に元に戻す作業が容易になります。
GA4 クロスドメイン 設定手順
GA4におけるクロスドメイン設定は、複数のドメインをまたいでユーザーの行動を正確に計測するための手順です。Googleタグマネージャー(GTM)を使用する方法と、直接タグを編集する方法の2つが存在しますが、ここではより管理しやすいGTMを使った設定方法を中心に解説します。
Googleタグマネージャーを使用した設定方法
ステップ1:GTMコンテナの準備
まず、対象となるすべてのドメインに同一のGTMコンテナが設置されていることを確認します。異なるコンテナが設置されている場合、クロスドメイン設定は正常に機能しません。GTMの管理画面にログインし、該当するコンテナIDがすべてのドメインで共通であることを確認してください。
ステップ2:GA4設定タグの確認
GTMの管理画面で、既存のGA4設定タグを開きます。タグの種類が「Googleアナリティクス:GA4設定」となっているタグを選択してください。このタグには、測定IDが設定されているはずです。測定IDは「G-」から始まる形式で、GA4プロパティごとに固有のものです。
ステップ3:クロスドメイン測定の設定
GA4設定タグの編集画面で、「設定フィールド」または「詳細設定」のセクションを開きます。ここでクロスドメイントラッキングのパラメータを追加します。具体的には、次のように設定を行います。
フィールド名 | 値 | 説明 |
---|---|---|
linker | {“domains”:[“example.com”,”shop.example.net”]} | 計測対象のドメインをJSON形式で指定 |
上記の例では、example.comとshop.example.netの2つのドメインを設定しています。
ドメイン名は必ず正確に入力し、wwwの有無も含めて実際のサイトの状態と一致させてください。サブドメインを含む場合は、そのサブドメインも個別に記載する必要があります。
ステップ4:参照元除外の設定
クロスドメイン設定を行った後は、GA4のプロパティ設定で参照元除外リストを更新する必要があります。GA4の管理画面にアクセスし、「データストリーム」から該当するウェブストリームを選択してください。
「タグ設定を行う」をクリックし、「すべて表示」を選択すると、「ドメインの設定」という項目が表示されます。ここで「除外する参照のリスト」にクロスドメイン対象のすべてのドメインを追加します。この設定により、ドメイン間の移動が参照トラフィックとして記録されることを防ぎます。
設定項目 | 設定値の例 |
---|---|
除外する参照ドメイン | example.com |
除外する参照ドメイン | shop.example.net |
除外する参照ドメイン | payment.example-service.jp |
ステップ5:タグの公開
すべての設定が完了したら、GTMでタグのプレビューモードを使用して動作確認を行います。問題がなければ、「送信」ボタンをクリックしてバージョンを公開してください。公開時にはバージョン名や説明を記入しておくと、後から変更内容を追跡しやすくなります。
GTMを使用しない直接設定の方法
タグマネージャーを使用せず、HTMLに直接GA4タグを記述している場合は、次のように設定を行います。既存のGA4タグのconfig部分に、linkerパラメータを追加する形になります。
具体的には、gtag関数のconfig行を次のように変更します。
この記述を、対象となるすべてのドメインのHTMLヘッダー部分に設置します。測定IDの部分(G-XXXXXXXXXX)は、実際のGA4プロパティのIDに置き換えてください。また、GA4の管理画面での参照元除外設定も同様に必要です。
サブドメイン間の設定
メインドメインとサブドメイン間でのクロスドメイン設定については、通常は自動的に計測が継続されますが、厳密な設定を行う場合は次の点に注意が必要です。
同一のルートドメイン内であれば、cookieの共有が可能なため、多くの場合は特別な設定なしでユーザーの追跡が継続します。ただし、サブドメインが異なるサーバーで運用されている場合や、セキュリティ設定が厳格な場合は、明示的にlinkerパラメータにサブドメインを含める方が安全です。
複数ドメインをまたぐ設定の注意点
3つ以上のドメインをまたいでクロスドメイン設定を行う場合、すべてのドメインの組み合わせを正確に記載する必要があります。例えば、メインサイト、ショッピングカート、決済ページがそれぞれ異なるドメインで運用されている場合、3つすべてをlinkerパラメータに含めてください。
また、設定漏れがあると該当部分でセッションが切れてしまうため、ユーザーの行動が正確に追跡できなくなります。特に決済フローなどの重要な行動データが失われると、コンバージョン分析に大きな影響を及ぼします。
外部サービスとの連携時の設定
外部の決済サービスや予約システムなど、自社で管理していないドメインを経由する場合、そのドメインにもGA4タグを設置できるかどうかを確認する必要があります。設置が不可能な場合は、そのドメインを経由した後の戻りリンクにパラメータを付与するなど、別の対策が求められます。
一部の外部サービスでは、URLパラメータの保持機能を提供している場合があります。この機能を活用することで、GA4が使用するlinkerパラメータ(_gl)を保持し、ドメインをまたいでもセッションを継続できる可能性があります。サービス提供元に確認してみてください。
GA4 クロスドメイン設定後の確認・検証方法
クロスドメイン設定を完了した後は、正しく動作しているかを必ず確認する必要があります。設定ミスや不備があると、ユーザーの行動が正確に計測されず、分析結果に大きな影響を及ぼします。ここでは、確認すべき項目と具体的な検証手順を詳しく解説します。
リアルタイムレポートでの即時確認
設定直後の動作確認には、GA4のリアルタイムレポートが最も有効です。管理画面の左メニューから「レポート」→「リアルタイム」を選択し、実際に異なるドメイン間を移動しながら計測状況をチェックします。
確認手順は以下の通りです。まず、メインドメインのページをブラウザで開き、リアルタイムレポートに自分のアクセスが表示されることを確認します。次に、設定したクロスドメイン先のリンクをクリックして別ドメインに移動し、セッションが継続したまま計測されているかをリアルタイムレポートで確認します。
正常に動作している場合、ドメインを跨いでもユーザー数が1のまま維持され、ページビューのみがカウントアップされます。もしドメイン移動後に新しいユーザーとして計測される場合は、設定に問題がある可能性が高いです。
URLパラメータの付与確認
クロスドメイン設定が正しく機能すると、ドメイン間のリンクに自動的に「_gl」というパラメータが付与されます。このパラメータには、セッション情報を引き継ぐための識別子が含まれており、パラメータが正しく付与されていることが正常動作の証となります。
確認方法は簡単です。クロスドメイン対象のリンクをブラウザで右クリックし、「リンクのアドレスをコピー」を選択します。コピーしたURLをテキストエディタなどに貼り付けると、「?_gl=」または「&_gl=」で始まるパラメータが含まれているはずです。
パラメータが付与されていない場合は、Googleタグの設定内容を再確認する必要があります。特にドメイン指定の記述ミスや、タグの配置漏れがないかをチェックしましょう。
参照元除外設定の動作確認
クロスドメイン設定と同時に、参照元除外の設定も正しく反映されているかを確認します。GA4の管理画面で「データストリーム」を開き、対象のウェブストリームを選択後、「タグ設定を行う」から「すべて表示」をクリックします。
「参照元除外リスト」の項目を開くと、設定したドメインが正しくリストに含まれているかを確認できます。ここにクロスドメイン対象のすべてのドメインが登録されていることが重要です。
セッション数とユーザー数の推移確認
設定後、数日間のデータを観察してセッション数とユーザー数の変化を確認します。クロスドメイン設定が正しく機能すると、通常はセッション数が減少し、ユーザー数も適正化されます。
指標 | 設定前の傾向 | 設定後の変化 |
---|---|---|
セッション数 | ドメイン移動ごとに新規セッション発生 | 継続的な1セッションとして計測され減少 |
ユーザー数 | 同一ユーザーが複数回カウント | 正確に1ユーザーとして集約 |
直帰率 | ドメイン移動で直帰扱いになる | 実際の行動に基づいた正確な値 |
参照元 | クロスドメイン先が参照元表示 | 本来の流入元が正しく表示 |
もし設定後もセッション数が変わらない、または予想外に増加している場合は、設定が反映されていない可能性があります。
探索レポートでのユーザー経路分析
GA4の探索機能を使用すると、より詳細な検証が可能です。「探索」メニューから「経路データ探索」を選択し、ユーザーがドメイン間をどのように移動しているかを視覚的に確認します。
開始地点にメインドメインのページを設定し、次のステップでクロスドメイン先のページが自然に繋がっているかを確認します。途中でセッションが途切れていると、経路が分断されて表示されるため、設定の不備を発見しやすくなります。
コンバージョン計測の整合性確認
クロスドメイン設定の最終的な目的は、正確なコンバージョン計測です。特にECサイトで決済ドメインが別の場合や、外部フォームを使用している場合は、コンバージョンが正しく元の流入経路に紐づいているかを確認する必要があります。
「レポート」→「収益化」セクションでコンバージョン経路を確認し、ドメイン移動前の流入元情報が保持されているかをチェックします。もし「direct / none」や別ドメインが参照元として表示されている場合は、設定に問題があります。
DebugViewでの詳細検証
より技術的な検証を行いたい場合は、GA4のDebugViewを活用します。DebugViewを有効にするには、ブラウザに「Google Analytics Debugger」などの拡張機能をインストールするか、Googleタグマネージャーでプレビューモードを使用します。
DebugViewでは、送信されるイベントとパラメータをリアルタイムで確認できます。ドメイン間を移動する際に、session_idやclient_idが同じ値で引き継がれているかを詳細に検証できるため、問題の特定に非常に役立ちます。
複数ブラウザ・デバイスでのテスト
クロスドメイン設定は、使用するブラウザやデバイスによって動作が異なる場合があります。Chrome、Safari、Firefox、Edgeなど主要なブラウザで動作確認を行い、スマートフォンとPC両方でテストすることをお勧めします。
特にSafariのITP(Intelligent Tracking Prevention)やFirefoxのETPなど、サードパーティCookieを制限する機能がある環境では、想定通りに動作しないケースもあります。各環境での計測状況を把握しておくことが重要です。
定期的な監視とメンテナンス
クロスドメイン設定は一度設定して終わりではありません。新しいドメインの追加、タグの更新、プラットフォームの仕様変更などにより、定期的な見直しが必要になります。
月に一度程度、レポートで参照元データや流入経路を確認し、不自然な「direct / none」の増加や、本来つながるべき経路が分断されていないかをチェックしましょう。早期に問題を発見することで、データの精度を維持できます。
Q&A/よくある疑問
GA4のクロスドメイン設定について、実際の運用現場で頻繁に質問される内容をまとめました。
設定時や運用中に疑問が生じた際の参考にしてください。
1. クロスドメイン設定は全てのサイトで必要?
クロスドメイン設定は、すべてのサイトで必須というわけではありません。
複数のドメインをまたいでユーザーの行動を一つのセッションとして計測したい場合にのみ必要となります。
具体的には、次のようなケースで設定が必要です。
ケース | 具体例 | 設定の必要性 |
---|---|---|
外部決済システムへの遷移 | ECサイトから決済代行会社のドメインへ移動 | 必要 |
外部予約システムの利用 | 宿泊施設サイトから予約システムへ移動 | 必要 |
複数ドメインでの事業展開 | 本サイトとブログサイトを別ドメインで運営 | 必要 |
単一ドメイン内での完結 | サイト内のすべての機能が同一ドメイン内 | 不要 |
クロスドメイン設定をしない場合、ドメインをまたぐたびに新しいセッションとして計測されます。その結果、コンバージョン経路が正確に把握できず、広告効果測定や分析の精度が低下してしまいます。
一方で、関連性のないドメインまで設定対象に含めると、データが混在して分析が困難になります。設定が必要なドメインを適切に判断することが重要です。
2. GA4でクロスドメイン設定後、ユーザー数が増えたのはなぜ?
クロスドメイン設定後にユーザー数が増加する現象は、設定前は同一ユーザーが複数回カウントされていた状態が正常に修正されたことを意味します。
これは一見矛盾しているように感じられますが、実際には次のような仕組みで発生します。
設定前の状態では、一人のユーザーがドメインAとドメインBを訪問すると、それぞれ別のユーザーとして計測されていました。しかし実際には同一人物であるため、セッション数は増えてもユニークユーザー数は本来1人です。
クロスドメイン設定後は、ドメインをまたいだ訪問が一つのセッションとして統合されます。その結果、以下のような変化が起こります。
指標 | 設定前 | 設定後 | 変化の理由 |
---|---|---|---|
セッション数 | 多い | 減少 | ドメイン間の移動が同一セッション内として統合される |
ユーザー数 | 重複カウント | 正確な数値 | 同一ユーザーの重複が解消される |
直帰率 | 高く見える | 正確な数値 | ドメイン遷移が離脱扱いされなくなる |
ただし、設定後にユーザー数が大幅に増加した場合は、設定に誤りがある可能性もあります。参照元除外リストの設定が適切でない場合や、不要なドメインまで対象に含めている場合などが考えられます。設定内容を見直し、意図した動作になっているか確認してください。
3. ドメイン間でセッションが切れる場合の原因と対策
クロスドメイン設定を行ったにもかかわらず、ドメイン間でセッションが切れてしまうケースがあります。これは複数の原因が考えられ、それぞれに対応した対策が必要です。
最も多い原因は、リンクにLinkerパラメータが正しく付与されていないことです。GA4のクロスドメイン設定では、ドメイン間のリンクに自動的にパラメータを付加することでユーザーを識別します。この仕組みが機能していない場合、セッションは継続されません。
主な原因と対策を以下にまとめます。
原因 | 詳細 | 対策 |
---|---|---|
設定対象ドメインの記述ミス | サブドメインの記載漏れやスペルミス | GA4管理画面のデータストリーム設定を再確認し、正確なドメイン名を設定する |
リダイレクト経由での遷移 | サーバー側リダイレクトでパラメータが失われる | リダイレクト時にLinkerパラメータを保持する処理を実装する |
JavaScriptでのリンク生成 | 動的に生成されたリンクにパラメータが付与されない | リンク生成時にLinkerパラメータを手動で追加するか、計測タグの読み込みタイミングを調整する |
ブラウザのCookie制限 | プライバシー設定やブラウザ仕様でCookieがブロックされる | 完全な対策は困難だが、First Party Cookieの利用を徹底する |
HTTPSとHTTPの混在 | プロトコルが異なるとCookie共有ができない | すべてのドメインをHTTPSに統一する |
対策を講じた後は、必ずリアルタイムレポートやDebugViewを使って動作確認を行ってください。実際にドメイン間を移動し、セッションが継続されているかを確認することが重要です。
4. タグマネージャーなしで設定は可能?
Googleタグマネージャーを使用せずにクロスドメイン設定を行うことは可能です。GA4の計測タグを直接HTMLに設置する方法でもクロスドメイン設定は実装できますが、タグマネージャーを使用する場合と比べて設定方法が異なります。
タグマネージャーなしで設定する場合、GA4の設定タグに直接パラメータを追加する必要があります。具体的には、gtagの設定部分に「linker」パラメータを記述します。
それぞれの方法のメリットとデメリットは以下の通りです。
設定方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
タグマネージャーを使用 | 設定変更が容易、複数サイトの一元管理が可能、デバッグ機能が充実 | 初期設定に知識が必要、タグマネージャー自体の読み込みが発生 |
直接タグを設置 | シンプルな構成、外部ツールへの依存がない | 変更時に全ページの修正が必要、複雑な条件分岐の実装が困難 |
直接タグを設置する場合でも、GA4の管理画面でクロスドメイン対象のドメイン設定は必要です。これを設定しないと、Linkerパラメータが付与されても正しく機能しません。
また、WordPress等のCMSを使用している場合は、プラグインを活用することで比較的簡単に設定できます。ただし、プラグインの品質や更新状況には注意が必要です。
技術的な知識に不安がある場合や、複数のドメインを管理する必要がある場合は、タグマネージャーの導入を検討することをおすすめします。長期的な運用を考えると、管理のしやすさは重要な要素です。
5. 設定後に計測されないイベントがある場合の対応
クロスドメイン設定後、特定のイベントが計測されなくなる問題が発生することがあります。
これはイベント計測タグの発火タイミングや設定条件が、クロスドメイン設定の影響を受けている可能性があります。
特に次のようなイベントで問題が発生しやすい傾向があります。
- ドメイン遷移直前のボタンクリックイベント
- 外部ドメイン遷移後の最初のページビュー
- フォーム送信後の完了ページでのコンバージョンイベント
- 特定のURLパターンをトリガーとするイベント
問題の特定と対応は、以下の手順で進めることが効果的です。
確認項目 | 確認方法 | 問題が見つかった場合の対応 |
---|---|---|
イベントが発火しているか | DebugViewでリアルタイム計測を確認 | 発火していない場合はトリガー条件を見直す |
パラメータが正しく送信されているか | ブラウザの開発者ツールでネットワーク通信を確認 | パラメータ設定を修正、変数の値を確認 |
フィルタで除外されていないか | GA4のデータフィルタ設定を確認 | フィルタ条件を調整または除外 |
タグの読み込み順序 | タグマネージャーのプレビューモードで確認 | タグの優先順位を調整、依存関係を設定 |
ドメイン遷移時にイベントが失われる場合は、遷移前に確実にイベントを送信する仕組みが必要です。タグマネージャーを使用している場合、リンククリック時に少し遅延を設けてからページ遷移させる設定が有効です。
また、外部ドメインから戻ってきた際のイベント計測では、参照元の扱いに注意が必要です。クロスドメイン設定により参照元情報が変化するため、特定の参照元をトリガー条件にしているイベントは動作しなくなる可能性があります。
問題が解決しない場合は、GA4のリアルタイムレポートとDebugViewを併用しながら、一つずつ条件を切り分けて原因を特定してください。複数の問題が同時に発生している場合もあるため、体系的なアプローチが重要です。
GA4 クロスドメイン設定で正確なデータを取得するためのポイント
GA4のクロスドメイン設定を実施した後も、正確なデータ取得のためには継続的な管理と最適化が求められます。設定を完了しただけでは、実際の計測環境で発生する様々な問題に対応できません。ここでは、実務で役立つ具体的なポイントを解説します。
参照元除外リストの適切な管理
クロスドメイン設定を行っても、参照元除外リストが正しく設定されていないと、ドメイン間の遷移が外部参照として記録されてしまいます。GA4の管理画面から「データストリーム」→「タグ設定を行う」→「すべて表示」→「ドメインの設定」で、クロスドメイン対象の全ドメインを除外リストに追加する必要があります。
特に決済システムや予約システムなど、外部サービスのドメインを利用している場合は、これらのドメインも漏れなく追加してください。参照元除外リストに未登録のドメインがあると、セッションが分断され、コンバージョン経路の分析が正確にできなくなります。
URLパラメータの保持設定
広告流入やキャンペーン計測用のUTMパラメータは、ドメイン間を遷移する際に失われることがあります。これを防ぐためには、GA4タグの設定で「linker」パラメータを使用し、ドメイン間でURLパラメータを引き継ぐ設定を有効化することが重要です。
Googleタグマネージャーを使用している場合は、GA4設定タグの「設定するフィールド」で以下のように設定します。
フィールド名 | 値 | 説明 |
---|---|---|
linker.domains | example.com,shop.example.com | クロスドメイン対象のドメインをカンマ区切りで列挙 |
linker.decorate_forms | true | フォーム送信時もパラメータを引き継ぐ |
linker.accept_incoming | true | 他ドメインからのリンクパラメータを受け入れる |
この設定により、広告効果測定やキャンペーン分析の精度が大幅に向上します。
サブドメインとルートドメインの統一管理
www.example.comとexample.comのように、wwwの有無で異なるドメインとして認識されるケースがあります。また、blog.example.comやshop.example.comなどのサブドメインも、設定方法によっては別サイトとして計測されてしまいます。
これらを統一して計測するには、GA4のデータストリーム設定で「cookie_domain」パラメータを適切に設定します。通常は「auto」で自動設定されますが、複雑なドメイン構成の場合は、ルートドメイン(.example.com)を明示的に指定することで、すべてのサブドメインで共通のCookieを使用できます。
測定IDの重複設定の回避
複数のドメインで同じGA4測定IDを使用する際、誤って異なる設定が混在すると、データの整合性が失われます。特にタグマネージャーと直接実装が混在している環境では、同じページで測定IDが二重に発火するケースがあります。
この問題を防ぐには、ブラウザの開発者ツールでネットワークタブを確認し、GA4への送信リクエストが重複していないかチェックしてください。重複がある場合は、一方の実装方法に統一する必要があります。
Cookieの有効期限とストレージ設定
GA4はファーストパーティCookieを使用してユーザーを識別しますが、ブラウザのプライバシー設定やITP(Intelligent Tracking Prevention)の影響で、Cookieの有効期限が短縮されることがあります。
この対策として、GA4タグで「cookie_expires」パラメータを設定し、Cookieの有効期限を適切な期間(通常は7,776,000秒=90日間)に設定することで、ユーザーの継続的な追跡精度を高められます。ただし、プライバシーポリシーやCookie使用の同意取得との整合性も確認してください。
イベントパラメータの一貫性確保
クロスドメイン環境では、各ドメインで発火するイベントのパラメータ設計を統一する必要があります。例えば、商品詳細ページで発火する「view_item」イベントのパラメータが、ドメインごとに異なる命名規則や値の形式になっていると、レポート作成時に集計できません。
以下のようなイベントパラメータの標準化ルールを策定し、全ドメインで適用してください。
パラメータ名 | データ型 | 命名規則 | 例 |
---|---|---|---|
item_id | 文字列 | 商品SKUコード | SKU-12345 |
item_name | 文字列 | 商品名(日本語可) | ワイヤレスマウス |
price | 数値 | 税込価格(円) | 2980 |
currency | 文字列 | ISO 4217通貨コード | JPY |
この一貫性が保たれていないと、クロスドメイン環境でのeコマース分析やコンバージョン計測に大きな支障が出ます。
リダイレクトチェーンの最小化
ドメイン間でリダイレクトが多段階で発生すると、途中でCookieやパラメータが失われるリスクが高まります。特にHTTPからHTTPSへのリダイレクト、wwwの有無によるリダイレクト、そしてドメイン間のリダイレクトが連続すると、セッションの継続性が損なわれる可能性が高くなります。
可能な限りリダイレクトは1回で完結するように設定し、やむを得ず複数回のリダイレクトが必要な場合は、各段階でGA4のリンカーパラメータ(_glパラメータ)が正しく引き継がれているかを確認してください。
デバッグモードでの定期的な動作確認
GA4には「DebugView」という機能があり、リアルタイムでイベントの発火状況を詳細に確認できます。クロスドメイン設定後は、ブラウザの拡張機能やURLパラメータ(?_ga_debug=1)を使用してデバッグモードを有効化し、実際のユーザー動線に沿ってドメイン間を遷移しながら、以下の点を確認してください。
- 各ページでGA4タグが正常に発火しているか
- session_idが全ドメインで一貫しているか
- user_idやclient_idが引き継がれているか
- コンバージョンイベントが正しく記録されているか
- 参照元情報が不正に上書きされていないか
定期的なデバッグ確認により、設定変更やサイト更新による計測不具合を早期に発見できます。
データフィルタとデータ削除リクエストの活用
テスト環境のトラフィックや社内からのアクセスがGA4に記録されると、正確な分析ができなくなります。GA4の「データフィルタ」機能を使用して、特定のIPアドレスや開発環境のドメインからのトラフィックを除外する設定を行ってください。
また、既に記録されてしまった不要なデータについては、GA4の「データ削除リクエスト」機能で削除できます。ただし、削除には最大72時間かかるため、事前にフィルタ設定を行い、不要なデータが記録されないようにすることが最善の対策です。
コンセント管理プラットフォームとの連携
GDPR(EU一般データ保護規則)やCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)などのプライバシー規制に対応するため、Cookie使用の同意取得が必須となっています。クロスドメイン環境では、全ドメインで統一されたコンセント管理が求められます。
OneTrustやCookiebotなどのコンセント管理プラットフォームを導入している場合は、ユーザーの同意状態を全ドメインで共有し、同意が得られるまでGA4タグの発火を制御する設定が必要です。Googleタグマネージャーでは、コンセントモードを使用してこれを実現できます。
レポート画面でのドメイン別分析設定
クロスドメイン設定後も、どのドメインでイベントが発生したかを分析したい場合があります。GA4の標準レポートではホスト名(page_location)は表示されますが、より詳細な分析のためには、カスタムディメンションとして「domain」パラメータを追加することをおすすめします。
タグマネージャーで組み込み変数「Page Hostname」を使用し、すべてのGA4イベントにdomainパラメータとして送信するように設定すれば、探索レポートでドメイン別のユーザー行動を詳細に分析できます。この設定により、クロスドメイン全体の傾向と各ドメインの特性の両方を把握できるようになります。
GA4 クロスドメイン設定についてのまとめ
GA4のクロスドメイン設定は、複数のドメイン間でユーザーの行動を正確に追跡するために必須の設定です。
設定を行わないと、ドメイン移動時に別セッションとして計測されてしまい、コンバージョン経路やユーザー行動の分析に誤差が生じます。
Googleタグマネージャーを使えば設定は比較的簡単で、設定後はリアルタイムレポートやセッション数の変化で検証できます。
正確なデータ取得のためには、事前準備と設定後の確認を確実に実施することが重要ですので、対象となるサイトを運営されている方は、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください!